あなたの対処法は大丈夫? 救急救命士に聞く“本当の応急処置”(内装業編)_00

あなたの対処法は大丈夫? 救急救命士に聞く“本当の応急処置”(内装業編)

2017.03.31

安全第一を意識していても、ケガをする可能性がゼロではないのが建設現場のお仕事。もしものときでも被害を最小限に食い止められる応急処置を知っておく必要があります。でも、その対処法で本当に大丈夫なのでしょうか? そこで今回は、緊急時の対処法のプロである東京消防庁の救急指導課・佐竹史成さんに適切な応急処置の仕方を伺ってきました。内装業に多いケガのケースとその応急処置をお伝えしていきます。

 

目次


1.出血した場合の応急処置

2.熱中症で倒れた場合の応急処置

3.落下事故の場合の応急処置

4.骨折した場合の応急処置

5.指を切断した場合の応急処置

6.ドリルで足を巻き込んだ場合の応急処置

7.釘が刺さった場合の応急処置

8.塗装作業中、溶剤が目に入った場合の応急処置

 

血が止まらなくなった場合は、血の出方によって処置を変える


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――まずはじめに、手や腕を切ってしまい血が止まらなくなってしまったときは、どうしたらいいでしょうか? 現場で起こった際は、とにかくタオルなどで押さえて、心臓より高く掲げるということも聞いたりします。

佐竹さん(以下、敬称略):出血の種類によって緊急度や、処置の仕方がまったく異なります。種類別にご説明していきますね。

 

動脈損傷の出血の場合


佐竹:まずは動脈を損傷した場合の出血ですね。こちらは血液の圧力が高く、噴き出すような出血が特徴で、放っておくと確実に死に至る可能性が高い重大な損傷です。緊急度が高く、適切な処置ができるかどうかが生死を分けると言っても過言ではありません。

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佐竹:動脈損傷による出血の場合は、まずビニール袋を手にはめ、それから清潔なガーゼや布で出血のある部分を心臓よりも高い位置で強く押さえることです。救急隊が駆けつけるまでは、仮に出血が止まっても押さえ続けることも大切なポイントです。

――なぜ、ビニール袋をはめるんですか?

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佐竹:押さえる人が本人でない場合、血液を介した感染症の恐れがあるため、汚れていなければ、コンビニの袋でも構わないので、傷口に直接触れないことが大事ですね。

 

それ以外の出血


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――他の出血に関してはどうでしょう?

佐竹:はい。他の出血は大きく分けて、「静脈性の出血」と「毛細血管の出血」があるのですが、動脈性の出血と比べれば、それほど緊急度は高くありません。 “ダラダラと血が出る”のが特徴の「静脈性の出血」は、動脈性の出血と同様に出血箇所にガーゼを当て上から圧迫し、救急隊の到着を待ってください。
毛細血管の出血は、紙で手を切ったときのようにうっすらと出血するので、ケガをした部位をよく洗い、絆創膏を当てておけば問題ありません。出血の部位と度合いによって、適切な処置をしてください。




止血法のおさらい


■動脈性の出血の場合

1.清潔な布で出血箇所を“強く”押し当て続け、心臓よりも高い位置を保ち、ただちに救急要請する

2.出血が止まらない場合は救急要請する

■静脈性の出血の場合

1.出血箇所に清潔な布を当てる

■毛細血管の出血の場合

1.傷口をよく洗い、絆創膏などを貼って様子をみる。ただちに救急車を呼ぶ必要はない。





 

熱中症で倒れた場合は、涼しい環境に移動するのが先決


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――熱中症で倒れたときに最初にすべきはどんな対処でしょうか? 水を飲ませるのがいいのか、その人を冷やしたらいいのか、迷ってしまいます。

佐竹:最初にすべきは、「熱の放出」ですね。まずは、服を脱がせて熱を逃がし、ベルトを緩めるなどして緊張を解きます。その後、日光が当たらないクーラーがよく効いた部屋に移動させます。

――屋内の作業中だと、クーラーの効いた部屋がそばにないことも多いと聞くのですが、そうしたときはどうしたら良いですか?

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佐竹:クーラーが効いていれば、車の中でも問題はありません。シートを倒すなどして、とにかく涼しい空間で楽な姿勢をとらせることが大事ですね。ちなみに、体勢は横向きが望ましいです。

 

――なぜ横向きが望ましいのでしょうか?

佐竹:仮に熱中症による嘔吐などがあった場合に、真上を向いていると嘔吐物が詰まってしまうこともあります。ですので、嘔吐物が詰まらないように横向きが望ましいです。

 

――特に冷やしたほうが良い箇所などはありますか?

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佐竹:はい。動脈が通っている「首」や「脇の下」、鼠径部(そけいぶ)と呼ばれるお腹側の足の付け根を冷やすと効果的です。ビニール袋に氷を入れて冷やすのが理想ですが、用意がない場合は近くの自動販売機で買ったばかりの冷たい缶やペットボトルで冷やしても良いでしょう。乱暴な方法なので最終手段ではありますが、水を身体に直接かけるのも良いですね。

 

――水分補給も必要ですよね?

佐竹:本人が飲めるようなら、積極的に水分補給をし、まずは様子を見ても良いでしょう。このときに飲むのは、甘いジュースではなく、水かスポーツドリンクが望ましいです。ただし、意識がはっきりしなかったり、水分補給ができなかったりするようなら、これ以上状態は良くなりませんので、すぐに救急車を呼んでください。
熱中症を引き起こす原因としては「寝不足」や「食事を摂っていないこと」も大いに関係してくるので、規則正しい生活をできるだけ心がけてほしいと思います。




熱中症の応急処置のおさらい


1.服を脱がし、ベルトを外して楽な格好にする

2.クーラーの効いた涼しい空間に移動し、横向きになる

3.首や脇、鼠径部など動脈の通る箇所をよく冷やす

4.水分補給ができる場合は、スポーツドリンクか水を飲む。水が飲めない場合は救急車を呼ぶ





 

落下事故のケガ人は「動かさない」のが原則


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――内装工事の際には、1800mmの脚立から落下してしまったという話もよく聞きます。頭を打った場合は動かすなと聞いたりもしますし、安全な場所まで運んだ方がいいのでは?と思ったりもします。この場合、どんなアクションが正解なのでしょうか?

佐竹:この場合は「動かさない」というのが原則なんです。打ちどころによっては首の骨(頸椎)が損傷している可能性もあるので、下手に動かすことで症状を余計に悪化させてしまうことも考えられます。モノが落ちてこないようにしたり、機械のスイッチが入っている場合は止めたりという配慮は必要ですが、ケガ人は動かさないのが無難ですね。

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――気を付けたほうがいいことは他にありますか?

佐竹:意識があるかの確認をする際に“呼びかけ”をするかと思うのですが、そのときも相手の正面に立ってから呼びかけをするようにしてください。背後から呼びかけてしまうと、振り返った瞬間に頸椎を傷めかねません。

 

――やってしまいがちな盲点ですね。ヘルメットを着けている場合も、無理に外す必要はありませんか?

佐竹:そうですね。首が閉まって窒息する恐れがある、などのやむを得ない事情以外は外さないほうがいいと思います。転倒事故の際は、救急隊が到着するまでは“とにかく動かさない”が鉄則です。




落下事故の応急処置のおさらい


1.頸椎を損傷する恐れがあるので、患者をとにかく動かさない

2.呼びかける場合は真正面から





 

骨折した場合は雑誌を使い、「即席ギブス」を作る


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――骨折も建設現場ではよくある事故の1つだと思います。骨折の場合、三角巾がすぐに現場にあるわけもありませんし、添え木も内装の仕事ではない場合があるかもしれません。この場合にすべき応急処置はありますか?

佐竹:骨折したときに動かすと本人が痛がると思うので、少しでも楽でいるために「固定」することが大事です。建設現場にもありそうな身近なものを使って「即席ギブス」を作ることもできます。

 

――建設現場にもありそうな身近なもの、って何ですか?

佐竹:たとえば、雑誌です。

 

――雑誌?

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佐竹:はい。まずは骨折箇所を包み込むように雑誌を挟みます。このときに隙間ができてしまった場合は、タオルで埋めるようにします。

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佐竹:次にひもや手ぬぐいなどで、可能であれば「本結び」で、しっかりと固定します。このとき、結び目が骨折の部位にあたらないようにします。 以下で解説しますが、この「本結び」はしっかりと結べるにも関わらず、「堅結び」よりも解けやすく、固定が必要な応急処置には共通して使える方法です。覚えておいて損はないでしょう。

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■本結びのやり方


1.一般的なやり方で一巡させる

2.向かって“左側の紐を”右側の紐の“下に”通す

3.向かって“右側の紐を”左側の紐の“さらに下に”通す

4.両側に引く




骨折の応急処置のおさらい


1.痛くならないように固定

2.添え木の代わりに雑誌が役に立つ





 

指を切断したらまず止血、離れた指は「冷やして保存」


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――指が完全に切り離されてしまったら、どうしたら良いでしょう? 切断してしまった指の保管はどうするのが良いのでしょうか?

佐竹:元の指の止血と離れた指の両方をケアしておく必要があります。元の指の止血は冒頭の出血の応急処置同様、清潔な布を押し当ててください。このとき、切断面が雑菌で汚れないようにガーゼなどで包むのがポイントです。

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佐竹:切断で離れてしまった方の指は2重にビニール袋に入れ、外側のビニール袋に氷水を入れて冷やしておけば、損傷をおさえられます。
このときに離れた指を放置したり、水で洗ったり、直接浸けてしたりしてしまう方も多いのですが、指の組織が損傷する原因になるので絶対に避けてください。




指を切断した場合の応急処置のおさらい


1.まずは切った元の切断面を止血する

2.切った先の指は(あれば)ガーゼで包み、ビニール袋に入れて保管

3.指を入れたビニール袋の外側にもう1つビニール袋を被せて、氷水を入れて、冷やす





 

ドリルで足を巻き込んだ場合も、慌てず止血


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――ドリルにズボンが引っかかり、足が巻き込まれてしまう事故も多いと聞きます。

佐竹:ドリルに巻き込まれた場合は、えぐれたような傷になるかと思うのですが、刃が食い込んだままか外れているかで対処法が異なります。刃が外れている場合は、止血して救急隊の到着を待ってください。
また、刃が刺さってしまっている場合は、無理に抜かず、119番にかけた際にその旨を伝えて止血してください。それ以外にできることは特にありませんが、「立つ」よりも「座る」、座るよりも「寝る」姿勢をとったほうが良いですね。




ドリルに足を巻き込まれたときの応急処置のおさらい


1.まずは止血

2.救急隊を待つ間の体勢は、立つ<座る<寝る





 

釘が刺さった場合も、抜かずにそのまま


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――釘が刺さってしまった場合は、自身で抜いたほうが良いでしょうか?

佐竹:抜きたくなる気持ちはわかりますが、基本的にはそのままで置いておいてください。無理に抜こうとした場合に傷を広げる可能性があるのと、止血代わりになっている釘を抜くことによってさらに出血させてしまう危険があるためです。
ひどい場合にはパイプが身体を貫通してしまい、身動きがとれないというケースもあるかと思います。その場合にも電話できちんと状況を教えてもらえれば大丈夫です。救急隊とは別に、パイプを切断することが可能な救助隊も出動して対応します。




釘が刺さった場合の応急処置のおさらい


1.基本的には刺さった釘を抜かない

2.釘やパイプが刺さったせいで身動きがとれない場合には、救急車を呼んだときにその旨を伝える





 

塗装作業中、溶剤が目に入った場合は洗う




――塗装作業中に溶剤が目に入った場合にも救急車を呼んだほうが良いでしょうか。

佐竹:自分で病院に行けるようなら救急車を呼ぶ必要はありません。ただし、流水でよく洗い流したうえで必ず病院にかかってください。絶対にこすったり触ったりしてはいけません。
感覚器は一度損傷すると復元が難しく、一生「見えない」、「聞こえない」ということになりかねません。もしものときに備えた予防策として、「ゴーグル」も有効です。




目に溶剤が入ったときの応急処置のおさらい


1.とにかく水で目をよく洗い流す

2.自力で病院に行けるなら救急車を呼ぶ必要はないが、症状がよくなっても必ず病院にかかる

3.予防策としてゴーグルを着用する





 

まとめ「“万が一”を侮らず、適切な予防と応急処置を知ろう」


救急救命士の方にお話を伺う中で、身近なものを使ってできる目からウロコな応急処置や、うっかりやってしまいそうなNG対処法などが数多くありましたね。

ケガや事故はないに越したことはありませんが、自分や仲間の“もしものとき”に備え、適切な応急処置を覚えておきましょう。

 

<「現場で人が倒れた」、そんなときに求められる救命処置、AEDの使用法についても救急救命士さんに教えてもらいました>
https://contents.team-sustina.jp/magazine/aed/ (基本編)
https://contents.team-sustina.jp/magazine/aed-2/ (実践編)

取材協力:東京消防庁救急部救急指導課
取材・文=佐々木ののか
撮影=大槻志穂

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