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ものづくりの楽しさで“一人前の○○”に育てる『クラフツメンスクール』

2017.03.08

建設職人を養成する『一般社団法人クラフツメンスクール』(以下、クラフツメンスクール)という学校をご存知でしょうか。そこは業界活性化を目的に、建設業の扉を開けた新入社員の研修や、職人の人材難に悩む企業の方々への人材獲得セミナーなど、様々なカリキュラムを用意し、これまで既に151名の職人を養成してきた学校です。そこでは同スクールの会員となっている建設企業が、各種講座を自社社員たちに受けさせることができるそうです。

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「ものづくりは楽しくないはずがないんです」(仲本 純)


今回、サスマガ編集部はクラフツメンスクールが開催する新入社員向けの「大工講座」の授業の模様を見学させてもらうことになり、2月中旬の雨と雪が入り混じりつつ降りしきる中、神奈川県某所で行われている授業にお邪魔してきました。訪問して間もなく、同スクール設立の経緯を説明してくれたのは、代表理事を務める仲本純氏。

「若い人たちへの建設業界のイメージアップと離職率を下げるためには、彼らをゼロの状態から『どう育てるか』が重要になると考え、そのスタートの部分を担うための学校を立ち上げようと決意しました。以前から同業の社長さんたちと、人材不足について話すことはあったのですが、有効な手立てが出ないまま話も終わってきました。でも誰かがやらなければいけない。だからですね」。

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音楽好きで、今も現役でバンド活動を行なっているという仲本氏は、ミュージシャンと一目でわかるような風貌の内側に、言葉からもわかる通り、建設業界への熱い想いを抱く人物。ご自身も元々職人で、本業は外装工事を請け負う『ガイズカンパニー株式会社』の代表取締役ですが、その傍らでこうした教育に関する事業を始めようと同氏を突き動かしたのは、職人の仕事の楽しさを“しっかりと伝えたい”という想いから。だからこそ、次のような言葉が自然と口を突いて出てきます。

「ものづくりは楽しくないはずがないんです。それを趣味にしている人がたくさんいることもその証明ですね。僕らはここで生徒に『職人の仕事は楽しい』ということを第一に教えたいので、技術的なことで生徒を怒ったりすることはしません。これが指導方針でもあります。このスクールを始めてからわかりましたが、そもそも怒ると彼らは失敗を繰り返してしまうんです。緊張してしまうからかもしれませんね。もちろん実際に働き始めると困難にも直面します。それならば、仕事の厳しさは嫌でも実務の中で向き合うことになる訳ですから、そのあたりは先々で『勝手に学んでくれ』というスタンスです」(仲本氏)。

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「一人前の見習いになる」とは?


今回取材した大工講座は10日間(土日をまたぐ)で集中的に開催されていて、修了のあかつきには、仲本氏の言葉を借りれば、「一人前の見習い」にまではなれるのだそう。『一人前』と『見習い』、相反する言葉であり、その真意を理解するには、建設業界が抱える人材獲得が難しい現状を知る必要があるので、その原因を以下に列挙します。

・先輩社員が技術や知識、作業工程を教えられる時間は、忙しい実務の中にしかない
・教える場合、道具の名称など、技術以前の事柄から先輩職人たちが手を止めて向き合わねばならず、企業としての生産性は下がる(積極的に教えにくくなる)
・上記により、何もできない新入社員は、先輩職人にとって作業効率上邪魔にすらなりうる(新入社員は「居づらい」)
・会社は給料を払う必要性がり、その間に掛かる人件費は生産性に見合ったものではない
・新入社員は技術を吸収する十分な猶予もなく、仕事の楽しさややりがいを見つける前に辞めていく
・やがて、会社は人材獲得を諦めてしまう

こうした流れが建設業界において、働く人材、特に若手を獲得しづらくしているようです。

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話しを元に戻すと、前述の『一人前の見習い』とは、現場にはどのような作業工程があって、道具や部位の名称も理解し、そこで求められる技術も“教わったことがある”という状態を指しています。つまり『ここからは修練を重ねて技術を磨いていく段階』に押し上げて、現場に立ちやすくさせることで、上記の課題を解決する取り組みと言えるでしょう。雇う企業側としては、少なくとも初任給に見合う程度の状態まで、このスクールによって引き上げてもらうことができます。クラフツメンスクールが大切にしている指導方針の中には、そのために同スクールが十分に時間をかけて教育していることがわかる言葉もありました。

「実技の中での失敗は、本人が失敗したことに気がつくまでは、絶対に作業をやめさせない」(仲本氏)。

もちろん、職人の仕事は、工程や使う道具によって大怪我につながる作業もあるため、そういう場合は例外という話ではありますが、それを除けば、方針として失敗も知識として吸収させることで、習熟度を高めているそうです。

取材協力:一般社団法人クラフツメンスクール、株式会社梅津商店(株式会社ハウスワン、ヨコハマフレーマーズ)、布施建築
(取材・文・写真:TEAM SUSTINA)

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