建設現場にこそ不可欠なAEDの必要性と使い方を救急救命士が教えます【基礎編】_00

建設現場にこそ不可欠なAEDの必要性と使い方を救急救命士が教えます【基礎編】

2018.01.09

どれだけ安全第一に作業をする建設現場であっても、急に現れる体内の不調は防ぐことは難しいもの。そこで活躍してくれる存在が、ここ10年ほどで急速に普及した『AED』(自動体外式除細動器)。

 

今回は、東京消防庁・救急指導課 救急普及係 主任の畠中正太郎さんにご登場いただき、AEDの使用方法や救急車が来るまでの適切な行動について伺いました。「基本編」と「実践編」の2本立てでお届けします。

 

目の前で倒れた人に遭遇した場合に求められる実践的な行動を教える「実践編」はこちら
建設現場にこそ不可欠なAEDの必要性と使い方を救急救命士が教えます【実践編】
https://contents.team-sustina.jp/magazine/aed-2/

 




AEDが建設現場で求められるワケ






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日常生活を送るなかでも見舞われることが珍しくない心肺停止による救急搬送。近年では高齢者のみならず、若年層でも突然発症してしまうケースがあるそうです。現代の食生活に端を発する生活習慣病が引き金になっているとも言われ、誰もがその危険に晒されているとも言えるでしょう。

 

そんななか、注目を集めているのがAED(自動体外式除細動器)。実際に使ったことがあるという方は少数かと思いますが、これによって救われた命も少なくありません。

 

とりわけAEDが果たす大きな役割が「救命率」「社会復帰率」です。

 

救急車が出動してから現場に到着するまで、平均時間は約8分と言われています。そのあいだの処置次第で、命が救われることはもちろん、社会復帰までの時間を大幅に短縮できる可能性があるのです。

 

以前に比べて大幅に改善されたとはいえ、肉体労働・屋外労働が基本の建設現場では日常生活以上にそうした危険性をはらんでいるのも事実。

 

2017年の東京において、足場が崩れて作業員が転落、心肺停止に陥ったーーという事件が何件か起こっています。「建設現場にこそAEDを設置すべき」との声も少なくありません(実際、AEDを取り入れている現場も増えてきています)。

 

そうした現場に身を置く私たちだからこそ、「どこに設置されているのか、あらかじめ確認しておく」「一度はAEDの使い方を学んでおく」といったことが必要になってきます。お互いをよく知る仲間と長く仕事を続けていくためにも、AEDの基本中の基本は知っておきたいところです。

 

救命救急士・畠中氏


プロフィール
畠中正太郎(はたけなか しょうたろう)
1984年生まれ。救急部救急指導課・救急普及係に所属し主任を務めている。専門学校に通い救急救命士の資格を取得した後、2008年に東京消防庁へ入庁。千住消防署、荒川消防署、足立消防署を経て、201610月に本庁へ配属された。現在は救急の普及活動を中心に、講習、広報資料制作および救急隊の指導などを行っている。好きな言葉は「人間力」。








 【事例紹介】心肺停止から復職までに半年以上を要した21歳電気作業員






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2002年7月のこと、電柱上で作業をしていた電気作業員のAさん(21歳)がバチっという音とともに感電、心肺停止状態に。約4分後に119番通報を受けた救急車が到着し、心肺停止を確認。そのとき救急救命士が同乗していなかったため、心臓マッサージと人工呼吸を行いながら病院へ搬送しました。

 

約10分後に病院に到着するも、心電図では心静止状態。そこからさまざまな蘇生措置が取られ、約30分後になんとか心拍が再開しました。自発呼吸もできない状態で、翌日にはICUへと移動。入室時は33~34℃という軽度低体温のままでしたが、そこからゆっくりと回復。

 

6日目には接触刺激による痙攣が誘発され、9日目になるとCRPと白血球の上昇とともに状態も回復傾向に。徐々に意思の疎通が測れるようになり、15日目には発語や意思表示ができていたので、20日目にしてようやく一般病棟に移れたのです。

 

一般病棟への移動から約6ヶ月、リハビリを含めての入院を要したAさん。退院後、数ヶ月の自宅療養を経て、ようやく職場復帰を果たしたそうです。


 


AEDの使用が救急救命士に認められたのが、この翌年の2003年。一般市民への普及が始まったのが、さらにその翌年2004年でした。Aさんが倒れたときにAEDがあれば、彼の運命はもう少し違っていたものになったかもしれません。


 


建設現場でも想定される、こうした現場特有の特殊な事故。ご存知のとおり、一般社会よりもこのような事例が発生しやすい場所で働く私たちこそ、改めてAEDの扱い方や設置場所についてしっかり知っておく必要があると言えるでしょう。


 








使う前に知っておきたい。AEDの基礎知識






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--そもそもAEDとはどんなもので、何に使うものなのでしょうか?

畠中:心停止によって意識と普段どおりの呼吸がなく倒れている人に対して電気ショックを行い、心臓を正常なリズムに戻すための機器です。

心停止の原因となる重症不整脈の代表例として「心室細動」(心臓が細かく痙攣してポンプ機能を失う状態)というものがあります。この心室細動に唯一有効なのが電気ショックで、バイスタンダー(救急現場に居合わせた人)ができる救命処置のひとつなのです。

 

 

--倒れている人の原因が心停止かどうか、AEDを使用するべきかどうか……の判断は、我々には「難しい」と感じてしまいます。

畠中:確かに、何が原因で倒れているのかは見た目で判断がつきません。後ほど詳しく説明しますが、AEDは高性能な機械ですので、電気ショックを与えるべきかどうかはすべてAEDが判断してくれます。

倒れている方の意識がなく、普段どおりの呼吸をしていなければ、恐がらずにAEDを使っていただきたいですね。

 

 

--どれくらいの頻度でAEDは使用されているのでしょうか?

畠中:平成28年度、東京消防庁管内(稲城市と島を除く)でAEDを使用した事案は全部で1521件あります。そのうち救急隊が到着する前にバイスタンダーによって電気ショックが行われた事案が317件です。

 

 

--ということは、だいたい1日に1回程度は一般市民が使っているんですね。では、AEDはどういったところに設置されていることが多いのですか

畠中:官公庁、駅、空港、飛行機内、行政施設、商業施設、スポーツ施設、文化施設などに設置されています。具体的な設置場所を知りたい場合は、一般財団法人日本救急医療財団が公開している全国AEDマップ(スマホ用アプリもあり)をご覧ください。緊急時には非常に役立つと思います。

 

新宿周辺AED所在地

>> 全国AEDマップ

 

--いろいろなメーカーからAEDが発売されているそうですね。機種によって使い方は違いますか?

畠中:一般的に流通しているもので約20種類あります。電源ボタンで起動させるタイプやフタを開けて起動させるタイプなどがありますが、基本的な操作はすべて同じなので安心してください。

AEDは「電源を入れる」「電極パッドを貼って心電図の解析」「電気ショックを与える」という3つのキーワードで成り立っており、すべて音声メッセージで指示してくれますので、シンプルで安心して使えるのです。

 

AEDの異常を知らせるランプ

--AEDを所持している建設会社があると聞きます。日常点検で必要なことはありますか?

畠中:AEDは、国内すべての機種がセルフチェック機能を搭載しています。電池切れや何らかの不具合が生じた場合などは、アラーム音やインジケータで異常を知らせてくれます。日常の点検ではインジケータの確認をしておいたほうが良いですね。

他にやらなければならないことと言えば、体に貼るパッドの交換です。パッドには使用期限がありますので、定期的に確認してください。またパッドは使い捨てですので、1回使用したら交換することも忘れずに。

 

 

--建設現場では外国人の方も多く働いています。その方々でも対応できるような機能があると嬉しいのですが……。

畠中:一部の機種にはバイリンガル機能が備わっているものもあります。あらかじめ外国人の方に使用方法をレクチャーしておくのが良いでしょう。

 

 

--建設現場ですと、雨が降っている場合がありますよね。

畠中:そうですね。その場合、床面は濡れていてもかまわないのですが、身体が濡れていると上手にパッドが貼れなかったり、電気ショックが心臓に伝われないということがあります。乾いたタオルなどで相手の胸をしっかり拭いてから使用してください。

パッドを貼る前に体が濡れていたら拭く

 

--医療器具が埋め込まれている人にもAEDを使って良いのでしょうか?

畠中:問題ありません。ただ、埋め込まれている場所は避けてください。ペースメーカー使用者ですと、胸の上部あたりに出っ張りがありますので、そちらを避けてパッドを貼ります。

ちなみに、パッドを貼る位置に貼付薬(湿布など)を貼っている場合は剥がしてください。その上からパッドを貼ると電気ショックが心臓に伝わらない、あるいはやけどの原因になる可能性があります。

 

 

--妊婦さんに使うのは躊躇してしまいます。

畠中:妊婦さんに使っても問題ありません。躊躇するとは思いますが、一刻を争います。迷わずに使ってください。

 

 

--幼児にも使って良いのですか?

畠中:問題ありません。しかし、パッドを重ねて貼らないように注意してください。AEDは基本的に胸の右上と胸の左下側に貼るのですが、子どもの体だとどうしてもパッドが重なってしまうことがあります。そういった場合は心臓をパッドで挟むよう、胸と背中に貼りましょう。

ちなみに、AEDには小児用(小学生未満用)のパッドやモードが搭載されているものがあります。年齢が分からなければ、体格をおおよその目安にして「大人用を使うべきか」「小児用を使うべきか」を判断してください。

 

 

--いざ人が倒れているのを見ると慌てそうです。

畠中:意識がない場合、まずは119番です。応急手当が必要なときは、救急隊が到着するまでに何をするべきかこちら側からアドバイスをしますので、指示に従ってください。……と言っても、いざというときに慌ててしまうことは仕方のないこと。

そのためにも、消防署などで行っている救命講習を受けることをオススメします。一度でも体験すれば、自信を持って行えるでしょう。

AED使用時には音声メッセージで誘導してくれますので、迷ったときでも「音声メッセージどおりに動けば良い」と頭に入れておくだけで、いざというときの落ち着き方はかなり違うでしょう。

 

 

《10日(水)公開の【実践編】では、「建設現場で、突然同僚が倒れた!」というときに行う、AEDを用いた実践的対処法をご紹介します》
https://contents.team-sustina.jp/magazine/aed-2/

取材協力=東京消防庁 救急指導課 救急普及係
取材・文=浜瀬将樹
写真=佐賀山敏行

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